約 435,267 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1455.html
マッドガッサー一味の接近戦闘戦力についてから 黒服さんからの話を聞いて、空になったジュースの缶をゴミ箱に放りながら俺は呟く。 「接近戦担当が少なくとももう一人ねえ」 しかも都市伝説に頼らないでも戦える強さの奴だ。 「下手をすればそのうえで何らかの都市伝説と契約している可能性もあるな」 Tさんがうなずきながら補足を加える。 「でもそうだとしたらなんで都市伝説の能力を使わないで生身で黒服さんの同僚と戦ったんだ?」 「契約している都市伝説が戦闘向けではないか、遠距離用の能力ということになるだろう」 詳しい情報がない今の状態ではこんな予測も当てにはならんがな。Tさんはそう言ってため息をつく。 そもそも唯一の目撃情報が『服の上からではわからない程度に、しかし確実に鍛えられたすばらしい筋肉。邪法の流派に囚われさえしなければ、すばらしきブラザーになったであろう』ってのがなー。 「なんつーか、独特過ぎて」 そう言ってTさんが買ったおかげで当たったもう一本のジュースを開ける。 「すみません、このような不確かな情報で」 「や、黒服さんのせいじゃねえよ」 まるで自分の不手際のように謝ってくる黒服さんに慌てて言い返す。真面目な人だから、こんなどうでもいい所とかでいらない心労を背負っていくんだろうなー。 そんなことを思ってジュースを啜っていると、 「元≪組織≫所属の者と≪組織≫の討伐対象が手を組んでいることになるのか」 ≪13階段≫の契約者と、≪爆発する携帯電話≫の契約者の顔写真を見つめている黒服さんを見てTさんが言った。 「ええ、そうなります」 「奇縁だな」 そう言ったTさんは黒服さんの顔をしばらく観察すると、深いため息をついた。 そして唐突に訊く。 「迷っているのか、それとも悩んでいるのか?」 「……?」 主語を言え! 主語を! 俺が心の中で叫ぶと、Tさんは質問の理由を口にした。 「その二人について、何か思うところでもありそうに見える」 そのせいでまた疲労が溜まっているようにも感じる。 そう言ったTさんに疑問顔だった黒服さんはああ、と答える。 「はい」 そしてぽつぽつと黒服さんは話してくれた。任務付けの生活を送っていたがそれでも心を無くさずに≪組織≫を嫌って離れていった≪13階段≫の契約者のこと。そして、≪組織≫から討伐対象に指定された≪爆発する携帯電話≫の契約者も調べてみれば彼の起こした殺人事件は正当防衛であったようであるらしいということも。 「同情か?」 全て聞いたうえで問いかけるTさんに黒服さんはしばし無言。でもやがて、 「……できれば戦わずに分かりあえればいいと、そう思います」 そう、ややためらいがちに口にした。 「そんなことでは早死にするかも知れんぞ」 若干厳しい声でTさんが言う。黒服さんはつい数日前に舌戦していた時とはうって変わってTさんに強い反対意見を言おうとしない。 「ですが」 弱くそう言いかける黒服さんの言葉にかぶるように鞄の中からリカちゃんが言った。 「お兄ちゃんも、そうなの?」 む? と唸るTさん。リカちゃんは同じ意味を持つ言葉をまた放つ。 「お兄ちゃんも、はやじに、するの?」 ――ああ、そう言えば、 「そうだよなー。リカちゃんだって、夢子ちゃんだってそうだ。なんだかんだで危なっかしいことやってたのに倒さずに分かりあったじゃねえか」 そう言うとTさんはまた唸り、 「確かにそうだが……」 「なら意地悪なこと言うなよ」 めっ。とおどけて言う。Tさんは渋い顔で、 「一応俺はそれで一回死んでいるようなものだから注意しているんだが」 「でも説教くさいのはいけないと思う」 めんどいし。教師連中思い出すし。 そう言うと、「まあ確かに」とTさんもうなずいた。やっぱりこの野郎もまともな生徒やってなかったんだな。 「≪組織≫から離れたくなる気持ちも分かるし、≪爆発する携帯電話≫にも――やりすぎだが同情の余地があるか。それに黒服さんには≪夢の国≫の件で多大な恩もあることだし、 ――もし俺が彼らと対峙することがあったなら」 そう前置きし、 「出来得る限り、彼らを殺さずに、そうだな――黒服さんの所に届けよう」 言った。そして、 「ただし、契約者や知り合いに一線を越えて手を出すようなら容赦はせん」 最後にそう付け加えた。 あーあ、 「せめてそいつらが男を女に変えるだけで満足するようならここまで話もこじれないんだろうなー」 空になった二つ目の缶をやっぱり放り投げつつ言うと、 「……はい」 「そうだな」 応じるように男二人分のため息が空中に溶けて、消えた。 巨大飛行型都市伝説についてへ 前ページ次ページ連載 - Tさん
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4872.html
体が痛い。背筋がぞくぞくして、なんだか頭がぼうっとする。 「風邪だね」 ここ学校町は新田家。ノイと柳を除く全員が風邪にやられていた。 いや、新田家だけではなく、学校町全体で風邪がパンデミックしていたのだ。 「ムーンストラック、しっかりして」 「む・・・ノイ・リリス。感染るといかん・・・部屋から出なさい」 「極くん、大丈夫?ああ、飛縁魔は殺しても死なないから平気だね」 「ぼ・・・僕は平気です、うっ、げほげほげほ」 「・・・治ったら、ごほっ、張っ倒す」 「みんな、どうしちゃったのかなー?」 部屋でひとり首をかしげるノイの耳に、小さな声が聞こえる。 「おい!」 「ふぇ?」 見回しても、誰もいない。みんな風邪で寝込んでいるし、柳は病人の世話に忙殺されている。 つまらないから幻と遊ぼうかと思ったけど、貴也がひどい風邪で、これまた看病に忙しいのだという。 空耳かなぁと窓の外に目をやると、 「ここだ!ここ!」 見下ろしてみると、毒々しい色の小さな金平糖のようなものがそこで声を張り上げて―なにぶん体が小さいので、その分声も小さい―いた。 どっかで見たことがあるなぁとしばし首を傾げ― 「あ!エヘン虫だ!」 テレビで見たー!ホントにいるんだー!と好奇心旺盛に突っつき回し出したので“エヘン虫”は大慌て。 「ば!バカかお前!オレ様はな、都市伝説なんだ!」 その“エヘン虫”いわく、彼は「馬鹿は風邪を引かない」という都市伝説で、普段はひっそり温和しく、冬だけ活動して平和に暮らしていたものの、ここ学校町に来た途端急に能力が拡大して、町中にその力を振りまいてしまったのだという。 「みんな困ってるよー、早くカゼをなおしてよ」 「オレ様は風邪を引かせることは出来ても、風邪を治すことは出来ないんだ!」 みんな困れ困れー!と高笑いを上げる「馬鹿は風邪を引かない」に向かって、全員の熱冷ましシートとアイスノンを代えた柳が一言。 「このまま風邪が収まらなかったら、『組織』が調査に乗り出して、君なんかあっけなく討伐されちゃうね」 にこにこの笑顔のままこれを言うものだから、かえって怖くなったらしい。 「うっ!それは困るのだ!オレ様契約者を探さなきゃ」 彼曰く、契約者を作って契約すれば、力が安定してこんなに無駄に振りまかずに済む、よって風邪のパンデミックも収まる。との事で。 「柳、あたし、行ってきていい?」 襟元にリボンを結んだ紺色のワンピースに、しっかりベレーを被って。 「じゃ、行ってらっしゃい。みんなの面倒は任せてね」 元気よく家を出たノイはぱたぱたと駆け出した。 街にも風邪はあふれていた。 「けほん、けほん」 「げほっ・・・こんな時にも呼び出しなんて、蓮華ちゃんも冗談キツいぜ」 「ご主人様・・・しっかり、こほっ」 「はっくしょん!」 「ごほっごほっ・・・ああ、あそこに健康な人間が、ああ妬ましい、健康が妬ましい・・・!」 「ホントにみんなカゼだぁ・・・エヘン虫、なんとかできないの?」 「だーかーら!オレ様はエヘン虫じゃなくて!ああもういい!」 「ねーねーっ」 ふたり(?)に声を掛けてきたのは、水色の髪と目の、ノイよりちょっと年上の、可愛い女の子。 その子はエヘン虫を指さして一言。 「それ、食べてもいーかな?」 「ふぇ?」 エヘン虫を?食べる? 「このコは都市伝説だから、食べられないよ?」 あまりにも唐突な申し出に、ふたりとも頭がついて行かない。 そうこうするうちに― 「えいっ」 その水色の髪の少女が、エヘン虫をつまみ上げてぽいっと口に運ぼうとした。 「わー!!??」 「やめてー!?」 ノイが少女に飛びついた拍子に少女の手がエヘン虫から離れ、あわててエヘン虫はノイの後に隠れる。 「私ね、つーちゃん」 「『感染系都市伝説担当部署』ο(オミクロン)-No.2」 「ゼロりんの命令で、その都市伝説を“食べに”来たんだ」 「えっ・・・エヘン虫を、食べるの?」 ダメだよ!とノイが悲鳴を上げる。 「だって、命令なんだもーん」 “つーちゃん”と名乗った少女はじりじりとノイに近寄る。 「邪魔すると、あなたも食べちゃうよ?」 (このコ・・・本気だ) どうしよう、エヘン虫が食べられちゃう。 少女の動きに合わせてじりじりとノイも後ずさりする・・・が。 (どうしよう、壁だ) 「じゃあ、いっただきまー・・・」 「あーっ!!!!」 時ならぬ大声に、思わず“つーちゃん”の動きが止まる。 大声の主は、長い茶髪のサイドだけを高い位置で束ね、水色に白いメリーゴーランドの柄がプリントされたワンピースを着た、 ふたりよりも更に年上と思しき、辛うじて少女と言えるくらいの女の子。 「それ、可愛いー!貰っていい?ううん、ちょーだい?」 「え、でもこのコ」 茶髪の少女はしばしじーっ、とノイを見つめる。 この少女は「ダンタリアン」の契約者、水上怜奈。 契約都市伝説である「ダンタリアン」の力を最大限に使い、あらゆるモノに「変身」し、 さらに「ダンタリアンの書物」であらゆる生き物の思考を“読む”事が出来る。 「あ、うん。いーよ、よくわかったから」 ひとり勝手に頷くと、ひょいとエヘン虫をつまみ上げる。 「それ、私が食べるんだけどー!」 さっと延びてくる“つーちゃん”の手をかわすと 「へーんっ、しんっ!」 茶髪の少女は見る見るうちに、小柄な黒髪に、ベレー帽姿の少女となっていた。 「う、うっそー!?」 「な、な、なんだぁ?」 ノイが、ふたり。 これには当のノイも、エヘン虫もびっくり。 未だに呆然としているノイの手を、ノイに“変身”した怜奈が持ち上げ 「どっちだっ?」 「え?え?こっち?」 あまりの急展開に彼女も着いていけなくなったのか、ノイの方を指し示す。 「あっそ、じゃ、コレあげる」 自らの盾にするようにひょいっとノイを差し出した怜奈。 「へーんっ、しんっ!」 お次は一羽の鳩になり、羽音もばたばたと喧しく飛び去っていった。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 あとに残されたのは、黒髪と水色の髪の、ふたりの少女。 先に我に返ったのは、水色の髪の少女で。 「ねっ!都市伝説は!?」 揺さぶられたノイは、未だに夢でも見ているかのような表情。 「あ、あの子が、持ってっちゃった・・・」 “つーちゃん”はしばらくその場でわなわな震えて立ち尽くしていたが、やがて。 「わーん!ゼロりんにいいつけてやるー!!」 盛大に泣きながら、去っていった。 それから程なく。 学校町で大流行した風邪は程なく終息に向かい、街はいつもの平穏を取り戻した。 「エヘン虫、元気でやってるかな・・・」 いつもの家のいつもの部屋でひとりごちるノイ。 「待って・・・『バカは風邪を引かない』?ってことは・・・あたし、バカってこと!?」 その疑問に今更気づいたことが、何よりの答えだろう。 END
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4991.html
「氷肌玉骨にして熱血の少女」 こんにちは、初めまして…。私は氷山 熔火(ひやま ゆうか)。ようかじゃないですよ。氷麗ちゃんのお友達、です… 自慢ではないですが氷のように透き通った肌をしている、とよく言われます。 火山みたいに煮え滾る熱い血をもっている、と自負しています。そんなどこにでも居ない女子高生、です…。何だろう、この自己紹介 熔火「今日も良い朝日です…。こんな日は早起きしてジョギングに限りますね」 私の毎朝の日課、ジョギング。毎日の運動は健康な身体を作ります 心なしか身体も暖まってきましたよ。ぽかぽかです…。さて、次はあの角を曲がって… 熔火「…っ!!」 角を曲がった私が見たものは。巨大なハンマーを振るう赤い人(?)と… その傍らで真っ赤に染まる…血と青痣で赤と青に染まる氷麗ちゃんでした 熔火「あ」 その光景を見て、私の心に…怒りに火がつく 熔火「ああああああああああああ!」 私はいつの間にか高く飛び上がって…赤いハンマー使いにとび蹴りをかましていました 『がふっ』 熔火「あなた…てめぇよぉ! 私の氷麗ちゃんに何してんだ…このキチ●イハンマーがぁッ!!」 私は氷麗ちゃんを傷つけたこのゴミクズに馬乗りになり、殴る蹴るを繰り返す…絶対にゆるさねぇ! 熔火「死ね、死ね、死ね、死ね…! 地獄で侘びろ!」 『ぐふっ…がっ…み、ミタ、ナ…』 私は怒りに任せ…熱い気持ちに任せ、ハンマー使いをタコ殴りにする そう、冷静さを失い、激情に任せて…攻撃を続けたんだ だから私は。「既にこいつがハンマーを持ってねぇ」なんてそんな初歩的なことにも気づかず、気づけず。 故に頭上にハンマーが来ていることも察せずに… 『私をミタやツは…私のように真っ赤に染まれ!』 氷麗「あぶな…っ」 無慈悲に振り下ろされるハンマーを…遠隔操作で私の体を砕かんとするハンマーを、避けることも受け止めることも出来なかった。 私の体は。粉々に砕け散った… ああ、畜生。頭に血が上ってた…この氷山熔火、一生の不覚だ… 目の前の都市伝説、『赤ハンマー』に手痛い、というか体中痛い打撃を受け、 血塗れになって痣だらけになっている私は白雪氷麗。ゲーム研究部の部員で、熔火ちゃんの友達… 紆余曲折あって、この『赤ハンマー』に襲われて、だから私は応戦した。 契約都市伝説『雪女』で応戦したわけだけれど。最初に不意打ちで一発貰ってしまったせいか、苦戦を強いられた …そして結局、このザマ。惨め。『雪女』の方は雪だから大丈夫だったけれど…私は一歩も動けない ああ、これはもう、終わったかな… まぁまぁ楽しい人生だったわ。 「ああああああああああああ!」 と、目を閉じかけた私の耳に響く、私の目を覚ます声。熔火ちゃんの声だ 熔火「あなた…てめぇよぉ! 私の氷麗ちゃんに何してんだ…このキチ●イハンマーがぁッ!!」 熔火ちゃんは私に止めを刺さんとする『赤ハンマー』にとび蹴りを当てる 助けに来て、くれたんだ… 熔火「死ね、死ね、死ね、死ね…! 地獄で侘びろ!」 とび蹴りを当てて体制を崩した『赤ハンマー』に馬乗りになりつつ、殴る蹴るを繰り返しながら、罵倒する熔火ちゃん 少し言葉遣いが乱れているけど、私のために…あら? さっきから『赤ハンマー』と呼んでいるが。 この都市伝説…“ハンマーを持っていない”…? さっきまでは持っていたのに…? 氷麗「……!」 上を見上げると、熔火ちゃんの上には『赤ハンマー』がもっていたハンマーが。 こいつ、ハンマーの遠隔操作もできたの…!? 『私をミタやツは…私のように真っ赤に染まれ!』 氷麗「あぶな…っ」 咄嗟に危険を知らせようと声を上げたときにはもう既に遅く。 鮮血で真っ赤に染まったハンマーは、無慈悲に容赦なく振り下ろされ。 熔火ちゃんの身体は、肉体は。 粉々に 砕 け 散 っ た … 私の、せいで。私がもっと早く、気づいていれば… 『くひっ…ははははは! わわ、私を見るからこうなるのよ…! さて、少し邪魔がはいっ、入っちゃったけど…』 振り下ろしたハンマーを携え、『赤ハンマー』が私にゆっくりと近づく。 粉々に砕け散った熔火ちゃんの身体を間近で見ていた私は、当然茫然自失になっていたので そのさまを目を虚ろにして眺めている。 『つつつ次はああ貴方よ…! わた、私みたいに真っ赤に染まりなさいいいい!』 ハンマーが私に振り下ろされる。 当たったら死ぬだろうけど…友達も守れなかった私に生きる価値など既にない。 だから… 『雪壁…』 …? 既に私の頭はハンマーで潰されているはずなのに、私の頭はしっかりと形を保っている。 というか、何時までたってもハンマーが落ちてこない。これはいったい…? 『まったく、氷麗ったら…今の攻撃は避けられたでしょう?』 私の契約都市伝説、『雪女』が雪で壁を作り、ハンマーを受け止めていた 赤槌『くっ…』 雪の壁を砕こうとしている『赤ハンマー』だが、苦戦しているよう… 氷麗「どう…して…?」 私は自分の傷口と血液を凍らせて応急処置しながら、『雪女』に尋ねる。 雪女『どうしてって…決まってるじゃあないですか。都市伝説が契約者を守るのは当たり前ですよ?』 氷麗「違う…」 そうじゃない。そんなことを聞いてるんじゃない。 雪女『え?』 氷麗「私が聞いてるのは、それが出来るのならどうして…熔火ちゃんを助けてくれなかったのか、ってこと…」 雪女『………』 しばらくの沈黙の後、雪女は口を開いた――いや、雪の壁を作ってハンマーを受け止めている雪女は当然向こうを向いているので、 私からは雪女の口元は見えないのだが、声がしたという理由からそう判断しただけなのだが 雪女『…できなかったんですよ。私も、ギリギリまであの赤ハンマーがハンマーを遠隔操作していることに気がつかなかった…気がつけなかったんです。 だから間に合わなかった…。その時は私の体も砕かれていて雪の量が足りなかったから、そこまで届かなかったんです…ごめんなさい』 申し訳なさそうに『雪女』は言う 氷麗「……いえ、貴女のせいじゃない。私が、もっと早く気づいていれば…。 もっと早く察していれば、あの子は攻撃を受けずに済んだ。 熔火ちゃんは、死なずに済んだのに…」 ……めったに感情をもらすことがない私の目から、雫が落ちてくる。頬が濡れて、止まらない 雪女『え?』 と、『雪女』は驚いたような声を上げる 雪女『何を言っているんですか? 氷麗。あの子、熔火さんはまだ死んでいませんよ?』 え? 氷麗「……え?」 そんなわけない。そんなはずはない。私の目に焼きついて離れない。だってあの子はハンマーに叩き潰されたんだから 動くことも助けることも出来ず、無残にあっけなく圧死したんだから。 赤ハンマーに真上から叩き潰されて、 氷麗「粉々に、砕け散ったんだから」 ………ん? あれ?『粉々』? 『粉々に砕け散った』…? 待てよ、待てよ…おかしくないかしら? 『ぐちゃぐちゃに潰れた』なら分かる。けど、人間が…脊椎動物が、 氷麗「ハンマーで叩かれて粉々に砕け散るなんて、ありえない…」 そう、私の親友熔火ちゃんは、まるでガラスのように――薄氷のように、割れて砕けてしまったんだ 雪女『…ああ、そろそろ限界です…ね!』 とうとう雪の壁が破壊される。しかしそれを破壊したハンマーの勢いも殺され、つまり仕切りなおしの状態になったわけだ 赤槌『ああ…恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいッ! 顔から火が出そうだわ…だから叩き潰す!』 と、ハンマーを『赤ハンマー』の顔面に、氷の弾丸が飛んでくる 赤槌『…え?』 「これで冷えました?」 弾丸が飛んできた方向から聴きなれた声がして、そこに見慣れた少女の姿が …あの位置は、雪女の雪が積もった場所で…そして何より。 熔火ちゃんが、砕かれた場所… 雪煙が晴れ、影の正体が露になる。そう、そこにいたのは、やっぱり… 熔火「ありがとうございます雪女さん…お陰で、頭が冷えました」 まるで、あの時の破壊が無かったかのように。氷細工のように美しい少女が佇んでいた 赤槌『お前、は…! さっき確実に殺したはず…このハンマーで! まさか、まさか私がしくじったとでも言うのか!? ああ恥ずかしい! 私がハンマーで仕留め損ねるなんて…!』 熔火「いえいえ、確かにしっかり砕かれましたよ、私は…。だけど残念なことに、私は砕かれたくらいじゃ死にません」 熔火ちゃんは赤ハンマーを指差しながら、ポーズを決めて、次の言葉を言い放つ 熔火「恥ずかしさで焼けてしまいそう? だったら安心してください。この私、氷山熔火の熱血で、貴女の頭を冷やして差し上げ…」 氷麗「熔火ちゃん!」 良かった。良かった。良かった…熔火ちゃんが生きてて、良かった……! 私は思わず、熔火ちゃんに抱きついていた 熔火「~///」 ……ん? あれ? 熔火ちゃんから湯気が出てる? というか熔火ちゃんがどんどん痩せていってる? 熔火「駄目ッ…です氷麗ちゃん…こ、こんなところで…!」 雪女『……』 氷麗「え? な、何? どうしたの熔火ちゃん!? 大丈夫!?」 熔火ちゃんはなぜか顔を赤くしているし、雪女は冷ややかな目でこちらを睨んでいる。どうしたのかな… よく分からないけどこのままではまずいと思ったので、熔火ちゃんから身体を離した すると熔火ちゃんはしばし残念そうな表情をした後、自分の頭に手を当てる。すると熔火ちゃんの顔の赤みが消え、湯気も出なくなった 熔火「氷麗ちゃんにこんなところで抱きつかれるなんて……頭がフットーしちゃったよおっっ…」 氷麗「沸騰しちゃったの!?」 大事件だ。でも一体どうしてそんなことに… 雪女『氷麗、貴女はハーレムラノベの主人公ですか…?』 相変わらずの冷ややかなジト目で、雪女は私に言う 氷麗「え? ハーレムラノベに喩えるなら私はヒロインその3あたりだと思うんだけど」 クーデレポジション的な。自分で言うのもなんだけれど 熔火「こほん。では気を取り直して…。 『赤ハンマー』。私のこの煮え滾るような熱血で、貴女の頭を冷やして差しあげます……!」 どうやら立ち直った様子の熔火ちゃんは、律儀に待っていてくれた『赤ハンマー』に向き直り、ポーズをキメながらそう言った 赤槌『やってみなさい。貴女が私をどうこう出来ると思っているなら、そのふざけた幻想ごと叩いて打破して壊して砕いて、潰してあげる…って何言わせんのよ!』 顔をより一層真っ赤にしながらハンマーを構えつつ熔火ちゃんに飛び掛ってきた。照れるならやらなければいいのに… 熔火「『封氷被鎧(アイスタンク)』」 熔火ちゃんは身体に氷を鎧のように纏い、ハンマーを受け止めてしまう。もしかして、これが熔火ちゃんの契約都市伝説…? 氷を操るタイプの都市伝説は結構あるけど… 赤槌『くっ…硬い! ならば私も…「落槌注意(フリーフォール)」…ってどうしてさっきから私に恥ずかしい台詞ばかり言わせるのよぉ!』 熔火ちゃんの上空にハンマーを転送する『赤ハンマー』。そのハンマーは重力に従い、熔火ちゃんの頭上へ落ちる…咄嗟に避けようとする熔火ちゃんだったが、間に合わず、ハンマーは熔火ちゃんの頭部を砕く… 赤槌『ふんっ。口ほどにも無いわね。私を辱めるからそうなるの…え?』 頭部を砕かれたはずだが、見ると熔火ちゃんの首から上がどんどん凍っていき、頭が完成すると元の熔火ちゃんに戻った 熔火「今のは…痛かったですよ?」 赤槌『っ!! どうして!? 貴女それでも人間なの!?』 熔火「ええ、勿論人間ですよ。それにさっき言ったでしょう? 私は砕かれても死なないって」 何これ、私の応急処置なんか目じゃないくらいの再生能力…「氷で肉体を修復する」それが熔火ちゃんの能力!? それならさっきの雪女の発言にも合点がいく…! ん? 「氷で肉体を修復する」? それってもしかして…じゃあ熔火ちゃんの契約都市伝説ってまさか… 氷麗「『ハボクック』…?」 私がぼそりと呟くと、『赤ハンマー』は何かに気が付いたように表情を変える 赤槌『「ハボクック」…!? まさか、貴女の契約都市伝説は「氷山空母」!? 計画のみに終わった、氷で出来たイギリスの航空母艦! 氷で出来ているから、「水さえあれば凍らせて損傷を補修できる」というあの…!』 熔火「おや、なかなか鋭いですね二人とも。ええそうですよ。私の契約都市伝説は『氷山空母』。私の身体は氷で出来ています」 雪のような美白と、氷のように透き通った肌を持つガラス細工のように美しい氷肌玉骨の少女、氷山熔火。けれどまさか、本当に肉体が氷で出来ていたなんて…! 熔火「だから私は冷気で空気中の水分を凍らせることが出来ますし…身体が砕かれても凍らせればすぐに元通りです。空中の水分の凍らせ方を工夫すればこんなことも出来るんですよ…? 食らいなさい、氷の巨砲、『銃凍砲(クレバスカノン)』!」 熔火は器用に氷の大砲を作ると、そこから氷の砲弾を飛ばす 赤槌『その程度!』 しかし『赤ハンマー』はそれを難なく打ち落とし、叩き壊す 氷麗「…! 『雪女』、私たちも…!」 雪女『はいはぁーい♪』 氷麗「『寒射寒撃雨霰(サンキューブリーザード)』!」 広範囲にわたって吹雪や霰を発生させ、敵にぶつける技『寒射寒撃雨霰』。本来なら味方も巻き込んでしまう諸刃の剣だけれど、私の読みが正しければ… 熔火「そう、その通り…氷で出来ている私にとって、吹雪は寧ろメディアラハンです!」 ベホマズンではなかった。ケアルガでもなかった。熔火ちゃんはどうやらメガテン派らしい… …と、いうか。私今までこういうのに名前つけたこと無かったんだけど。これはまさか、熔火ちゃんのペースに乗せられてる…? 幼馴染ながら恐ろしい子…! 赤槌『ぐっ…吹雪で前がよく見えないわ…! だがっ』 『赤ハンマー』のハンマーが長く伸び、先端の鈍器が反対側にも出現する。そして彼女は、それを高速回転させた 赤槌『「回転木槌(ハンマーゴーランド)」! 』 すると扇風機のように――扇風機以上の強風が、暴風が発生し吹雪を吹き飛ばした 吹雪が晴れれば視界も開ける。視界が開けば当然―― 赤槌『また私に恥ずかしい台詞をォォオオオオ!!! 死ね! 血に塗れて赤く染まれぇ!!』 高速回転するハンマーを瞬間移動を利用して『射出』する! そのハンマーは真っ直ぐ私の方に―― 『くひっひ…そっちの『氷山空母』の契約者には効かないだろうけど、貴女には十分有効でしょう――だから先に片づけてあげるわよぉ!!!』 この速度――しかも遠隔操作が可能……避けるのは不可能ね。雪の壁でガード? いや、この回転では破壊されてしまうでしょうね… その前に本体を倒す? ……いえ、さすがに間に合わないわ。一体どうしたら―― 熔火「これ以上氷麗ちゃんを傷つけさせない……!」 すると私の目の前には熔火ちゃんの背中が。熔火ちゃんが身を挺して守ってくれた…… 赤槌『くっひひひひひひひ……!』 『封氷被鎧』を展開し、回転するハンマーを受け止める熔火ちゃんだったが、しかし当の赤ハンマーは「笑っていた」。これは、嫌な予感…… 赤槌『ひっ、引っ掛かったわねぇ! 必殺……鬼殺し火炎ハンマー!』 やはり予感は的中した。赤ハンマーの高速回転するハンマーが火を放ったのだ。摩擦によるものか、都市伝説の力かは定かではないけれど―― でも、熔火ちゃんの身体は氷……! 氷タイプに炎技は「こうかばつぐん」……つまり! 熔火「くっ……氷の私に対しては、炎による攻撃が有効……!」 「……とでも、思っていたんですか?」 炎のハンマーを受けて体が溶けているが、余裕そうなセリフを吐く熔火ちゃん。……強がりとかじゃ、ないよね……? 熔火「そんなに熱いのが好きならあげますよ……飛びっきりに熱いやつをね! 『指火山(マグマズルフラッシュ)ッ!』」 熔火ちゃんは指を銃のように構えると、指先から弾丸を飛ばしました。……マグマの。 赤槌『ああああああああああ!!!! 熱い熱い熱い熱いッ!!! こ、氷使いじゃなかったの!? 多重契約者……しかも高温と低温、真逆の能力だなんて!』 確かにそうだ。氷とマグマ。高温と低温。凍結と燃焼。全くの真逆の能力――これらを同時に扱うのは非常に難易度が高く思える 熔火「まぁ、確かにこの二つの能力――高温と低温同士折り合いをつけるのは苦労しましたけどね」 赤槌『何なんだ、この能力……! 名前からしてマグマ……『ペレ』か?『ヘーパイストス』か? 『ミノア噴火』か? くっ……! か、顔が焼ける……! 熱い熱い熱いッ!』 顔を押さえながら狼狽える『赤ハンマー』。熔火ちゃんのファインプレーだ 赤槌『い……いや、そうね。どんな都市伝説かなんて重要じゃない……それに、私の顔が焼けるように熱いのなんていつものことじゃないか…… 最初から、恥ずかしさで……顔から火が出そうなんだか、ら!』 誰かと会話しているのか、あるいは自分自身に語りかけているのか――どちらにしてもともかく、赤ハンマーは冷静さを取り戻したようだ。 いや、冷静さというのは正確ではないと思う。羞恥心に苛まれているのだし。 まぁ、とにかく調子が戻った赤ハンマーは、やはりハンマーを飛ばしてきた。私に向かって 赤槌『あんたを狙ったところでそこの二重属性女が守ってくるんでしょう。だったら――そっちから壊すまでよ』 ……ではなく、そのハンマーは熔火ちゃんに向かって飛んでいた 熔火「無駄ですよ。打撃だろうと斬撃だろうと炎だろうと氷だろうと、私に物理攻撃は通じません!」 『氷山空母』の能力によって、氷の鎧を身にまとい、ハンマーを受け止める熔火ちゃん 赤槌『――かかったわね?』 しかし、その瞬間、赤ハンマーの口角がにやりと上がった 熔火「んぐ……ああああああああああああああああ!!!」 すぐに熔火ちゃんの悲鳴が聞こえる。どういうこと? 熔火ちゃんに鈍器は通じないはずなのに……! 赤槌『ビンゴ。やっぱりね。いくら氷でできていようと所詮人間。電気を流せば痺れるわ。 名付けて「雷神の鉄槌(トールハンマー)」……じゃないわよ私! 何名づけてんのよ! ああ恥ずかしい恥ずかしい! 』 顔を真っ赤にして騒ぐ赤ハンマー。でも、それどころではなく、熔火ちゃんは電撃を浴びている。 確か『氷山空母』は海水を使用することを前提に作られているし、強度の関係上パルプが混じっている。 混じりけのある水は、特に海水は電気をよく通す――つまり電気は効果覿面っ!! 赤槌『さて……厄介な壁役を封じられたし、貴女だけなら余裕よ。傷口は凍らせてある程度処置したみたいだけど、 それでも打撲や骨折まではどうしようもないでしょう……? ただでさえ一度ぼこぼこにした相手、満身創痍とあれば、ねぇ?っと!』 そう言いながらハンマーを飛ばしてくる赤ハンマー。その通りだ。一応動くことはできるとはいえ、この身体では満足に動けない 氷麗「それはどうかしらね……『雪女』!」 雪女『いえす、まむ!』 何故か軍隊みたく返事した雪女は、能力で猛吹雪を生み出す――攻撃力よりも、視界を奪うことに重点をおいた吹雪を。 そして吹雪に紛れてハンマーをかわす。……『雪女』に手伝ってもらって。 赤槌『くっ……またしても! み、見えない……!』 さて、この状況、はっきり言ってどうしようもない。だから一時撤退だ。私達は吹雪に紛れ、その場を離れた。 そして、吹雪が止む。吹雪が止めば、視界も晴れる 赤槌『ん……? あいつらはどこに行った? 逃げたのか……おや』 何かを見つけた様子の赤ハンマー。いや、見つけたのは何かではなく誰か。具体的には熔火ちゃんだった 赤槌『おやおや。随分と薄情なお友達じゃないか。私のハンマーで痺れたこいつを置いていくなんてさぁ。じゃ、止めと行くわよ――』 先ほどの『雷神の鉄槌』を、今度は手に持ったハンマーから直接電撃を流し込んで行う赤ハンマー 赤槌『死になさい!! 感電死させた後で、たっぷり真っ赤に染めてあげ………!?』 「『噴火の魔剣(ヒートソード)』。そんなに真っ赤なのが好きなら、真っ赤な炎で焼いてあげますね?」 しかし、その瞬間、赤ハンマーは背後から燃え盛る剣で刺されていた。貫かれていた。そう、これは勿論―― 赤槌『二重属性女……! な、何故……!? 確かにあなたは目の前で倒れて……!』 熔火「ああ、ごめんなさい。それ、偽物なんです」 氷麗「私が氷で作った、ね。私だって多重契約くらいしてるのよ?」 赤槌『多重契約者――貴女もか! いったい何の都市伝説……ぐふっ』 ただでさえ赤い身体を、鮮血と炎で赤く染めながら赤ハンマーは言う。 赤槌『さっきの剣、芯はマグマだった……それに氷で人を作る能力……この都市伝説は ……いや、どうでもいいわね。こうなったら切り札を切らせてもらうわよ――打撃だけどッ!』 血を吐きつつ、恥ずかしいと言いながらハンマーを飛ばしてくる赤ハンマー。一見すると、ただのハンマーだけど……これが切り札? 熔火「氷麗ちゃん、危ない!」 身体がぼろぼろになっている私は、ただのハンマーでも十分に危ない。なので、熔火ちゃんは私をかばった。 かばって、ハンマーを腕に当て、『氷山空母』の力で弾いた。 熔火「ぐはっ……!?」 その瞬間、熔火ちゃんの背中から胸にかけて、焼けたような穴が開いた――そう、丁度そこの赤ハンマーと同じように。 氷麗「……! あ、貴女……! 熔火ちゃんに何をしたの……!?」 赤槌『く、くふ、くっふひひひ……き、決まったみたいねぇ。私の切り札、「偽り写し記す大槌(ヴェルグ・アヴェスター)」ってね……。 私は「赤ハンマー」として当たり前のことをしただけよ……あの女を、私と同じようにした』 氷麗「ま、まさか……!」 赤ハンマーは、出会った相手を『ハンマーで殴り』、『自分と同じように』真っ赤にしてしまう現代妖怪。 まさか、この『ハンマーで殴る』という部分と、『自分と同じようにする』という部分を拡大解釈して……!? 赤槌『その通り……ハンマーを当てた相手に、自分の今のダメージと状態異常を写す。これが私の切り札よ……ぐふっ』 血を吐きながら、不気味に笑いながら、赤ハンマーは言う。 熔火「そんな……さっきから何度も氷で補修してるのに、傷が塞がらない……!」 そういえば、赤ハンマーの方に気を取られて、惨状の方に気が行って、気が付かなかったが、 よく見ると熔火ちゃんの胸部から滴り落ちる血は、何だが煮えたぎっているように見える。 いや、さらによく見るとこれは――マグマ? 赤槌『へぇ。そこの女、体は氷で出来てるのに血液はマグマなのね……ぐふっ。まるで、火山、だわ…… ねぇ、私も種明かししたんだし――教えてくれてもいいんじゃない? 貴女たちの、二つ目の契約都市伝説……げほっ』 氷麗「『つらら女』。雪女と近縁種、もしくは同一とされる妖怪」 熔火「ごほっ……ちぇ……『チェルフェ』……ですよ。チリの火山に住む、岩と炎で出来た怪物です……ぐふっ」 情報1に対し、2では割に合わない――とも思ったけれど、ここは素直に答えておいた。 別に隠すほどのことでもないし。 しかし、赤ハンマーの傷口が開くのと、悪化するのと比例するように――同調するように、熔火ちゃんの容体も悪化しているようだった。 まぁ、同じ傷なのだから当然か。……しかし、その悪化も『氷山空母』で治せないところを見ると、本家本元の『偽り写し記す万象』より使い勝手がよさそうだ。 赤槌『貴女たちにはこっぴどくやられたけれど――それでも私と同じにできた。 叩き潰して、真っ赤に塗りつぶせた。……だから、今回はこのあたりで満足しておきましょう。 でも、覚えておきなさい――』 血まみれで、息も絶え絶えに、生まれたての――死にかけの小鹿のように、赤ハンマーは捨て台詞を吐いた 赤槌『次は勝つ。完膚なきまでに潰す。叩いて潰して塗りつぶす。真っ赤に深紅に紅蓮に――鉄槌下して塗り上げる。 首を洗って待ってなさい。腕を磨いてまた来るわ』 流血に慣れたのか――あるいは、都市伝説ゆえか。先ほどと打って変わって、途切れることなく言った。 そして、一呼吸おいて、 赤槌『それじゃあ、また会いましょう……って、何格好つけてるのよ、私! 負けたくせに! 最後のも一矢報いただけだし(ハンマーだけど)、 結局2つ目の都市伝説の謎解きは諦めちゃったし――格好つけられる要素がないでしょう! 何を大物ぶってるのよ、恥ずかしい恥ずかしい恥ず…………』 と、ただでさえ赤い顔を一層紅く染めながら、騒いでいた、喚いていた赤ハンマーは突然にも、忽然と姿を消してしまった。 文字通り跡形もない――ほかの誰かに消滅させられた、とは考えにくいだろう。それならばもっと反応していいはずだ。 少なくともただで不意打ちでやられるような都市伝説ではない――そう言い切れる。そのくらいには強かった。 氷麗「空間移動系、かな……」 私の部活仲間であり、同級生であるところの、任天堂寺君――彼の契約都市伝説、『ゲーム脳』を思い出した。 これは敵による攻撃でなく、避難、逃亡であると考える。彼のそれと同じ、もしくは似た、『空間移動系』――あるいは、『異空間生成系』の能力であると推察した。 でも、赤ハンマーにはそんな逸話ないわよね……。もしかして、あの赤ハンマー…… と、思案する私だが、その思考は強制的に中断させられることとなる。 熔火「つ、ら、ら、ちゃーん!!!」 氷麗「ぐえっ」 ぐえっとか言ってしまった。乙女チックの欠片もないし、女子力なんて微塵もなかった。 でも許してほしい。傷だらけの肉体に、自分と同じくらいの身長、体重の女の子が飛びついては、こんな声も出ようというものだ。 え? 何キロか、ですって? 女の子にそういうことを聞くものじゃない――と、取ってつけたような女子力を発揮しておきましょう。 熔火「無事でよかったよー氷麗ちゃん! 心配したんだからね! 痛くなかった?」 痛いのは今だし、無事でよかったも心配したも私の台詞だ。 氷麗「それは私の台詞だよ――本当、死んじゃったかと思ったんだから。 ああ、そういえば――もう大丈夫なの? さっきの傷……」 熔火「ええ。どうやら永続するタイプの呪いじゃないみたいですね。あるいは射程外に出たのかも」 氷麗「へぇ……。それにしても、ハンマーの遠隔操作までならまだしも、発火や発電、伝説を拡大解釈、曲解した呪いに、そして最後の消失マジック。 私にはどうも、あの都市伝説が……『赤ハンマー』が、野生の都市伝説とは思えないのよね」 熔火「確かにそこは私も気になっていました。おそらく契約者持ち――それも、多重契約者だと思いますよ」 炎までならギリギリ曲解と言えなくもなさそうですけれど、発電や消失までとなると、ね…… と、熔火ちゃんは言った。直情的で情熱だが、冷静で思慮深いのが彼女、氷山熔火ちゃんなのだ。 その矛盾した人間性こそが、性格こそが、あのつじつまの合わない二つの都市伝説――低温と高温、『氷山空母』と『チェルフェ』を同時に扱える理由だろうか。 気になったので、私は熔火ちゃんに聞いてみた。 すると、別に隠すほどのことでもなかったらしく、 熔火「そうですね。私が先に契約したのは『氷山空母』の方ですけれど、この二つの都市伝説。 『氷山空母』と『チェルフェ』――氷の体と熔岩の血液。氷を融かすマグマと、マグマを固める氷。 この二つに折り合いをつけるのは、相当苦労しました。 折り合いをつけられたのは、私の性質のこともありそうですけれど――もう一つの、3つ目の契約都市伝説も、理由の一つ、きっかけの一端でしょうね」 一呼吸置き、 熔火「『マクスウェルの悪魔』――熱力学第二法則のエントロピー増大則に逆らう、化学の悪魔。温度差を生む都市伝説。それがあったからこそ、ここまでうまく馴染んだんだと思います」 計画中止に終わった兵器に、火山のUMAに、思考実験――性質どころか種類も違う、3つの都市伝説を同時に操るだなんて。 親友ながら恐ろしい。 氷麗「熔火ちゃんはすごいなぁ……私の契約都市伝説は、みんな似通ったものなのに」 冷気を操る『雪女』、氷を人間に変える『つらら女』。似通ったというか、同じといってもいいくらいだ。 熔火「氷麗ちゃんもすごいですよ。似たような2つの都市伝説から、全く別の能力を解釈するなんて……格好いいですよ」 格好いいと言われるほどのことでもないと思うが、しかし褒められて悪い気はしない。 否定しないのは熔火ちゃんらしいと思ったし、女子に対して格好いいはどうかとも思ったけれど。 氷麗「くすっ……ありがと」 私は小さく微笑んで、素直にお礼を言った。 熔火「つ、氷麗ちゃん……」 熔火ちゃんの頭から湯気が出た。……顔が若干赤い? 扱えてると思ったけれど、扱い切れてないのかしら? 雪女『鈍いですね……心まで氷柱ですか、貴女は』 と、ひどいことを言う『雪女』のことは無視した。私にだって感情くらいある。 名前は氷柱だが、心は雪解け水だ。 熔火「あ……あの……その……」 どうやらもじもじしている様子の熔火ちゃん。花を摘みに行きたいのか――と聞くほど、私はデリカシーに欠けてない。 花も恥じらう乙女なのだ。さりげなく行かせてあげるべきだろう―― 熔火「その……今から一緒に、お食事、行きま、せんか……?」 氷麗「そんなにかしこまらなくても、改まらなくても、もちろんOKよ」 友達なんだし、顔を赤らめながら、もじもじしながら言う必要はないと思うのだけれど。 まぁ、改めて誘うのも小恥ずかしいということなのかな? 氷麗「じゃ、行こうか?」 と、私は熔火ちゃんの手を引いた――すると、じゅっという音と共に、熔火ちゃんの頭が消滅した。 というか蒸発した――全然制御できてない。仕方ない子ね…… 氷麗「もう……折り合い付けたんじゃなかったの?」 私は氷麗ちゃんの頭に――頭だった位置に手をかざして、冷気を放った。 冷気を操れるのは何も『雪女』だけではないのだ。 熔火「あ……ありがとうございます」 頭部は氷に戻ったが、目はまだとろーんとしている。まぁ、そこは自分でどうにかできるだろう。 瞬きとかすれば。 氷麗「しっかりしてよね……大好きな熔火ちゃんが蒸発しちゃったら、すっごく悲しいんだから」 涙腺も表情筋も固い私も、大声で泣き喚いちゃうわよ。そんな格好悪い真似、させないでよね。そう言った。 熔火「あ、あぅ……」 またもや真っ赤になって湯気を出してる熔火ちゃんだが、流石に高校生にもなってあぅ……はないでしょ。 ライトノベルか。 そういうのが許されるのはフィクションだけだと思うが、まぁ可愛いのでよしとした。 氷麗「それで、どこに行こうか? 満身創痍だけれど、まぁ、傷をいやすためにもデートと洒落込みましょうか」 その後、食事に行くまでに何度も熔火ちゃんの頭部再生に手を焼いた――冷やした。 まったく、本当に……熔火ちゃんは、私がいないと駄目なんだから。 続く EXIT
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3519.html
ゆっくりと、夕日が沈んでいく 夕暮れ時、黄昏時 都市伝説の、時間 「…むぅ」 そんな、時間帯 一人、とぼとぼと歩いている少女の姿があった 少女、ニーナは小さくため息をつく 「…本当、私は未熟デス。クールトーを逃がしてしまうだなんて…」 一ヶ月以上も前の出来事 それを、未だに彼女は引きずっていた クールトー 悪魔的な存在と遭遇しながら、無様に踏みつけられて意識を失い、逃げられた …あれが、もし、人を害していたら それは、逃がしてしまった自分の責任ではないか 「………我らが主よ、どうか、私を罰してください………」 自分を罰する方法を、考え続けた しかし、考えはまとまらず…………ただ、自己嫌悪だけを重ねていく 遭遇した、凶悪な悪魔……都市伝説には、全て天罰を与えてきた しかし、それでも…クールトーを逃がしてしまったという責任は、彼女の小さな体に重くのしかかる 「…司祭様…」 そっと、胸元で揺れる木で出来た十字架……「ドッグウッド伝説」に触れる 悪魔を滅する為に、契約した都市伝説 司祭様から、与えられた力 この力を持ちながらも……自分は、こんなにも、無様 以前、倒せなかったドラゴンもそうだ たくさん、戦い方を学び、強くなったつもりだったけれど 自分はまだまだ、こんなにも、力が足りないのだ 「…こんな時………カイン司祭なら、どうしたのでしょう…」 自分の上司よりは、位が下の、とある司祭の事を思い出すニーナ 彼女に、都市伝説の力の使い方を教えてくれた青年 戦闘向きではない都市伝説と契約していたが、しかし、ニーナに戦い方をも教えてくれた青年だ 生真面目なあの青年だったならば、自分と同じような状況に陥った時、どうするのだろうか? ……いや、きっと、彼ならば、このような状況にはなるまい ますます、憂鬱な気分になって、とぼとぼと歩き続けるニーナ …くぅきゅるる お腹が小さく鳴る 相変わらず、空腹である 「……主よ、どうか、もっと、罰をお与えください……」 こんな、空腹よりも もっと、もっと、重い罰を 私は、それに耐え、悪魔を滅し続けますから 祈るように考えながら、ニーナは空き地に張ったテントへと、戻っていった …今日も、また 目標とする淫魔が見つからなかった事に、落ち込みながら 遠き、異国の地 とある、修道院にて その軒先を、一人の青年が掃除していた この国の男性にしてはやや背が低いが、整った容姿をしており、バランスの良い体格をしている 青年が、掃除を終えたところで……一羽の小鳥が、その肩に舞い降りてきた ちちち、と、囁きかけるように、青年の耳元で小さく鳴く 青年は、その小鳥を追い払う事なく、その囁きに小さく笑みを浮かべて耳を傾けていた 暖かな日差しの下、その様子はどこか微笑ましい光景だった ……しかし そこに、訪問者が近づいていく その気配を察したように、小鳥は飛び去ってしまった 「あ………」 飛び去る小鳥を、どこか寂しそうに見送る青年 …小鳥が完全に見えなくなったところで、訪問者がやってきた事に気付いた 「エイブラハム司祭…?何か、ご用ですか?」 「カイン司祭。お忙しいであうところ、申し訳ない」 青年…カインの元に訪れた男性…エイブラハムは、人の良い笑みを浮かべて、帽子を取った 白銀の髪が、日の光を浴びてきらきらと輝く 「ニーナの事を覚えているかね?」 「…?はい、覚えていますが。お………私が、彼女に都市伝説の扱い方や戦い方を教えていたのは、つい半年前までの事ですから」 彼女が何か?とカインは首をかしげた 実際の戦いの場に出た事がない自分が、ニーナに教えられる事は、そう多くなかった 戦い方とて、基礎を教え込んだだけだ ニーナと共に居た時間は、そう多くない そんな自分に、エイブラハム司祭は何の用でやってきたのだろう? 人ではない存在との戦い方について自身に教えを説いてきた司祭相手に、カインは疑問に思う 「ニーナは、今、日本にいるのだよ」 「……日本に?」 「学校町、と言う街だ。本当ならば、日本にいる「教会」のメンバーと合流させるべきだったのだが……手違いがあってね。彼女は、今、一人なのだよ」 「……!?彼女は、まだ子供だぞ!まさか、一人で行かせたのか……………ぁ」 驚きのあまり、素の話し方に戻ってしまったカイン エイブラハムは、小さく苦笑した 「周りに信者達がいる訳でもない。無理に言葉を丁寧にしなくとも良い」 「……ですが」 「まぁ、その生真面目さが君の良いところなのだがね」 話を戻そう、と表情を引きしめるエイブラハム …カインも、表情を引き締める 「…とにかく。今、ニーナは一人で、その学校街と言う街にいるのですね?」 「あぁ、そうだ……誰か派遣しようかとも思ったのだが、うまく人材が見つからなくてね………そこで、君に頼みたいのだよ。「教会」の一員である事を隠して、学校街に入り込み、ニーナの傍にいてやって欲しい」 「……「教会」の一員である事を隠して?何故ですか?」 「事情があってね……あの街は、本来、我ら「教会」にとって不可侵の地なのだよ……それでもなお、やらねばならぬ神の使命が、ニーナには、ある。その手伝いをしてやって欲しい」 「……私にできる事でしたら、協力します。すぐに、日本に向かう準備を整えます」 背筋を伸ばし、答えるカイン 詳しい事情はわからない だが、遠い異国の地で、あの小さな少女は心細い事だろう 自分が心の支え二なってやれるのならば、傍にいってやりたい 「あぁ…………頼みましたよ、カイン司祭」 カインの答えに、笑みを浮かべるエイブラハム その笑みの奥にあるものに、カインは気付かない それでは、と一礼して、立ち去っていくエイブラハム カインは、その背中を見えなくなるまで見送った ……ちちちっ、と 小鳥が、カインの元に戻ってきた その肩に改めて泊まり、首をかしげる 「……大丈夫だ。問題ない」 カインは小さく微笑むと、その小鳥をそっと撫でて…教会の中へと、入っていった 己に待ち受ける運命に 気付く様子など、カケラも、なく to be … ? 前ページ次ページ連載 - 我が願いに踊れ贄共
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2889.html
自宅にて。裂邪は1人でネットサーフィンをしていた。どうやら他の家族は出かけているらしい。 (シャドーマン 少年ヨ。今更ナノダガ。 (裂邪 ん? なんか用? (シャドーマン コノ間、公園ノ監視カメラニ私ヲ写サセテイタガ、自分デ撮ッタ方ガ早クナイカ? (裂邪 あぁ、そんなことか。 それじゃダメだな。 (シャドーマン ト、言ウト? (裂邪 仮に、俺が何度も何度もお前らの動画をあげ続けるとしよう。 同じ奴が何度もほぼ同じ内容の動画をあげてたら、怪しいと思わないか? (シャドーマン ナルホド。 (裂邪 あと、連続であげるってのもダメ。 毎日「シャドーマン」の話聞かされたら皆飽きるよ。 だから、俺が小学校卒業するくらいになったら、スーパーマーケットの監視カメラにお前の姿を撮らせて、 「忘れかけてた恐怖」を蘇らせるんだ。 消えかけた恐怖を思い出すことほど怖い事は多分無いよ。 (シャドーマン ・・・オ前、本当ハ小学2年生デハ無カロウ? ト言ウヨリ人間デハ無イノダロウ? (裂邪 もしホントにそうだったらとっくに世界征服してる。 (シャドーマン ソ、ソウカ・・・トコロデ、サッキカラ何ヲ見テイルノダ? (裂邪 可愛くない? 小学3年生でこのスタイルだぜ? (シャドーマン ・・・ヨク分カラナイガ、コウイウノハ大体大人ノ女性デハ? (裂邪 だから、ババアに興味ないし。 (シャドーマン (「ロリコン」・・・イヤ歳ガ不相応ダ・・・教エテクレ、誰カコノ答エヲ教エテクレ!) (裂邪 (何かシャドーマンが無言で苦しんでる・・・都市伝説も病気になるのかな?) (父母弟 ただいまー! (裂邪 げっ! やばい帰ってきた! 急いでネットを閉じる裂邪。 男の習性である。 しかし彼の徹底ぶりは小学生にしては凄まじきものだった。 (裂邪 えっと、cookieも削除して・・・早く早く! (シャドーマン (醜イナ。トイウヨリ、哀レダナ。) (裂邪 よし、強制シャットダウン! おかえり~♪ (シャドーマン (サテ、私モ一度消エルトシヨウ。) 昼食後、裂邪は続けてインターネットを開いていた。 (シャドーマン ン? 弟ハ何処ニ行ッタノダ? (裂邪 どうせデートだろ? 全く、まだ秋だってのに。 (シャドーマン オ前ハイナイノカ? 友達トカ。 (裂邪 大きなお世話だ!んなもん邪魔にしかなんないし! 一人でネットサーフィンしてる方が数倍楽しい。 (シャドーマン ツクヅク寂シイ奴ダナ。 シテ、今度ハ何ヲ見テイルンダ? (裂邪 あぁ、wikipediaの「都市伝説一覧」だよ。 若干少ないけど、大体の都市伝説は書かれてる。 これ見て近所にいそうな奴を片っ端から退治しようかな~と思ってね。 (シャドーマン (流石ニタダノ「ロリコンモドキ」デハ無イラシイ) (裂邪 やっぱり『学校の怪談』系はよくあるんだけどなぁ~。今まで避けてたんだ。 (シャドーマン 何故ダ? (裂邪 『学校の怪談』系の都市伝説は大体、というか90%ぐらいがトイレの話だろ? 俺の学校のトイレは日当たりが悪いんだ。ずっと日が差さないの。 おまけに何でか知らないけど電気はつかないし。 (シャドーマン ホゥ。デハ仮ニ出会ッタ時ハドウスルノダ? (裂邪 そこそこ。この間、口裂け女と戦ったとき、影が無くて超困ってたんだ。 だから「これ」を持ち歩くことにしたんだ。 裂邪はズボンのポケットから「何か」を出した。 (シャドーマン これは? (裂邪 ペンライト。しかもLEDだからスッゲェ明るいんだ。結構高かったけど・・・ これで暗闇でも影作れるし、暗闇だったら消したら影しかないだろ? (シャドーマン ナルホドナ。確カニソレナライツデモ影ヲ生ミ出セル。 (裂邪 だろ? 俺ってやっぱ天才?w ・・・でもさ、こういう道具使って戦ってる契約者っているのかな? (シャドーマン 都市伝説ニモ色々アルカラナ。特定ノ場所デシカ其ノ力ヲ発揮デキナイ者モイルラシイ。 (裂邪 へぇ~。大変なんだな、みんなも・・・ (シャドーマン 未来ノ支配者ガ他人ニ気遣イカ? (裂邪 まさか。是非一度お手合わせ願いたいなってね。 (シャドーマン (ココデマサカノ宣戦布告!?速攻デ潰サレルゾ・・・) その夜。裂邪は飽きずにPCを起動していた。 (シャドーマン コンナ夜中ニモスルノカ?明日ハ月曜日ダロウ? (裂邪 明日は祝日だからいいんだよ。宿題も金曜日にやったし。 (シャドーマン モシヤオ前、コノ世デ一番堕落シタ人生ヲ送ッテイル小学生デハナイノカ? (裂邪 うるさい!この世に堕落した小学生ぐらいゴロゴロしてるわ! (シャドーマン デ、今度ハ何ヲ見テイルンダ? (裂邪 朝の続き。 (シャドーマン ・・・ (裂邪 あと頼むから静かにしてくれよ。隣の部屋の弟が起きたら厄介だ。 (シャドーマン オイ、イナイゾ。 (裂邪 誰が? (シャドーマン オ前ノ弟ダ。 (裂邪 ・・・え? (裂邪 靴はあるし、鍵もかかってるけど、姿がないな。何で? (シャドーマン 私ニ聞クナ。 (裂邪 ん~・・・ん?「神隠し」?まさか都市伝説!? (シャドーマン 安心シロ。気配ハ無イ。 (裂邪 逆に困るな。じゃあ何故いないんだ? (シャドーマン 何カ目的ハアルダロウナ。夜中ニ、靴モ履カズニ出テ行ク理由が・・・ (裂邪 靴も履かずに・・・慌てていたのか、寝ぼけていたのか・・・あ! (シャドーマン 何カ思イ当タルコトガアッタノカ? (裂邪 あいつ、多分夢遊病患者なんだ。明日の朝親父に言おう。覚えてたら。 (シャドーマン ・・・ 裂邪の就寝後、弟はひっそりと窓から帰ってきたらしい・・・ ...END 前ページ次ページ連載 - 夢幻泡影
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4645.html
【陛下と僕と獣の数字 第六話】 「鷲山くん、今度一緒に遊びにいかないか」 「え?」 「この前のお礼も兼ねてだ!」 「ああ……」 そんな感じで事件の有った翌日、陛下はさっそく九郎に接触していた。 僕の都合は特に考えていない辺りがまた泣けるぜ。 「俺だって、解ったのか」 「私の眼力の前では仮面なぞ無意味故、しかし中々洒落たデザインだったな」 「ふぅん……まあ良いぜ、契約者同士話は有るだろうしな。場所は……」 うーん、完全に僕の存在は無視ですか。 「無論、私はセージを連れてくるし貴様はあの少女を連れてくるのだぞ 場所は街の北側にある遊園地が良いな、ダブルデートという形式にしておこう セージはあれで遊園地が好きだしな」 クラウディアちゃん愛してる。 マジチュッチュ、ディアちゃんマジディアディア。 でも僕が好きなのは遊園地じゃなくて油淋鶏だ。 食べ物だ、場所じゃない。話し聞いてなかっただろお前。 「あ、ああ……それなら一応了解とってから返事とさせてもらおうか」 若干困ったような表情をする九郎。 そりゃあそうだ、同級生がそんなメルヘンな趣味持っているなんて聞かされたらドンびくわ。 「うむ、それでは色よい返事を待っているぞ!」 そういって陛下は僕を連れて教室を出ていった。 「クラウディア、なんでわざわざ彼らに接触を?」 「うむ、あの九郎という男はまあ善人というか常識人というか、良きにつけ悪しきにつけ筋の通った気分の良い男だ しかし奴の側に居るあの女を見定めねば少々危険に思われてな」 「あー、あのちっちゃい子」 「そうだ、恐らくあれが九郎を蘇生させた都市伝説だろう」 「まだ死んだとも決まった訳じゃないのに……」 「いいや、私の直感が正しければ間違いなくあれは一度死んでいる そして私の直感は八割方当たる」 「ふぅん……じゃあ良いけど」 家に続く帰り道。 商店街にはまだあちこちに昨日の事件の爪痕が刻まれていた。 警察が忙しく歩き回っている中に黒服の人達も混じっている。 おそらくは組織の人間だろう。 「ひどいことになったものだな」 「一体なんだったんだろうね、あの這いよる混沌ってのは」 「詳しくは分からぬが……少なくとも邪悪な意思を以てこの街に顕現した都市伝説ではあろうな あれは早々に打ち倒さねばならないだろう」 「できるの?」 「余の辞書に不可能の文字はない」 「一人じゃあきついだろうに」 「一人なものか、セージよ。貴様が居るではないか」 「そう言われると照れるなあ」 「まあとにかく共通の敵を持つ九郎達が私たちにとっては何者なのかをはっきりさせておきたいのだ」 「なるほどね」 「そういうわけで、明日は遊ぶぞ。セージ」 「本来の目的は!?」 「ハハッ、自ずと知れてこよう」 しばらく話していると家の前に到着。 今日の帰り道は平和でなにより。 「ただいま帰りました母上殿」 「ただいまー」 「お帰りなさい、クラウディアちゃんにお手紙来ているわよ」 「おおなんと、国のものからでしょうか」 「ええ、伯爵様からみたい」 「ありがとうございます」 陛下は部屋に戻ってから手紙の封を開けて中身を読む。 「ふむ、奴の過保護ぶりには呆れてしまうな 幾ら父上から念入りに頼まれていたとはいえ何もそこまで」 「なんて書いてあるんだい?」 「うむ、最近この街に教会とは関係のない危険な都市伝説が紛れ込んでいるとのことだ 教会の奴らがまるで危険みたいな口ぶりなのだからこれが笑えてしょうがない 恐らく昨日の男もその危険な都市伝説関連だと見るべきだろうな」 いや、充分危険だと思います。 「奴らの神でも引っ張り出さない限り相性で勝てないものを延々と襲ってくるのだから愚かにも程があろう」 「あははは……」 やっべええええ、リアクション困るうううう! 「で、その危険な都市伝説って?」 「神様、邪神の類だそうだ、もはや都市伝説って騒ぎじゃないと思うのだがな」 ツッコミを待っているのだろうかこの少女は 「そうだな」 だからって突っ込むと思うなよ! あーでもクラウディアちゃんになら突っ込まれても構わないよ! ふはははは!男のくせにずいぶんと情けない声をあげるのだな!とか言われて口では言えないあんなことやこんなことをされるのも吝かではないよ! ちなみに本来はやぶさかじゃなくてやふさがだったらしいね! でも今では廃れた言い方だしやっぱり吝かでいいよね! 「で、奴らは私に好意を抱いているのだそうだ」 「好意?」 「そうだ、まあ碌でもない奴らに人気が出てしまうのも私の美貌と知性、そしてカリスマ故 それは特別に許してやるとしよう」 「でも厄介だな」 「何故だ?」 「触らぬ神に祟り無し、って知ってる?」 「ああ」 「好かれているということは向こうから接触を求めてくる可能性が有るってことだ」 「向こうから触ってくる上に祟りのある神か」 「そゆこと」 「厄介だな」 「そうなると……やはり同じ敵を相手にしている鷲山との連携は大事かもな」 「いや、それについても手紙があってな」 「え?」 「鷲山九郎はその邪神に乗っ取られている可能性があるのだそうだ」 思い出す、先日の戦いを。 あの禍々しい黒い甲冑を纏って剣を振るっていた姿。 あれが本当に鷲山九郎なのだとしたら……確かに乗っ取られているのかもしれない。 「明日のダブルデートが少々面白くなってきたな」 「面白いなんて言っている場合じゃないんじゃないの?」 「ふん、この私にとって危地こそが揺り籠、悲鳴こそが子守唄 相手が何であろうと私自ら見定めるだけだ」 不敵に笑う陛下。 彼女に引っ張りまわされるのがなんだかんだで楽しみな僕が居ることに僕は気づいていた。 【陛下と僕と獣の数字 第六話 続】 前ページ次ページ連載 - 陛下と僕と獣の数字
https://w.atwiki.jp/freiheit/pages/7.html
片目の黒猫亭 裏通りのどん詰まりにある、内はほらほら外はすぶすぶな酒場。空賊たちの憩いの場。 カッツェ 一人称:私 C(美乳)。酒場「片目の黒猫亭」のママ。黒髪黒目、色気漂う未亡人。アイゼン・アードラーの歌姫+航海士。 明け方に店を閉め、イーグルの墓にお参りし、就寝。昼頃起床して店を開ける。 どことなくイーグルに似ている大地に優しくしてしまう。大地もまんざらでもないのが問題。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/804.html
ドクター 02 そこは犬で溢れていた 犬種は様々で、どこにでもいるような雑種から血統書付きの高級種、果てはどうも狼っぽいものやどう見ても人面犬といった代物まで 広いスペースにケージの類は無かったが、雑然と散らかしているような事はなく、トイレや寝床といったスペースはきちんと整えられており、むしろ動物の住処とは思えないほど整然としていた 気ままに吠え、眠り、遊びまわる犬達 そこへ磨き上げられたフローリングを叩く靴音が近付いてくる 「総員、傾注!」 肉声でありながらスピーカーでも通しているかのような大きくよく通る声に、犬達は一斉に顔を上げ集合し整列までして『お座り』の体勢を取る その統制の取れた動きに男は背筋を伸ばし咳払いを一つすると――その厳しい顔付きを一変させ、笑顔を浮かべ一匹一匹を抱きすくめ撫で回す 「ああお前達は本当に良い子だな。安心したまえ、私がいる限りお前達の生活と安全と自由はきっと保障しよう。良き飼い主が見つかるまで存分に堪能するのだぞ」 頭やお腹を撫で、お手、おかわり、伏せ等々の芸一つ一つを賞賛し、個々に合わせた餌を配膳していく 都市伝説組織『第三帝国』日本支部こと、犬専門ペットショップ『ゲルマニア』 ヒトラーのそっくりさんと近所で評判の気のいい店主が、そっくりさんを通り越して本人だという事を知る者はほとんどいないのであった 「総統閣下、相変わらずの息災っぷりに安心を通り越して逆に心配になりました」 「む、ドクターかね。遠路遥々よく来てくれた」 店のドアを開けて入ってくるなりの部下の態度に、総統は全身犬まみれのまま真面目な表情に戻る 「済まんな、あちこち大変な状況ではあるが……南極や南米の私の下よりは研究と実務を進められると思ってな」 「ええ、ここまでの密度で都市伝説が跋扈してる地域は類を見ません。我々の求める都市伝説医学研究にはうってつけかと」 「密度だけではない、その強力さもだ。そしてその濃さと強大さは次々と別の都市伝説を引き寄せる。当然ながらトラブルも多い」 総統はお腹を撫でられ転がっている仔犬に視線を落とす 「私は外様であるし、大きな干渉を行うべきではない。そもそも私が動けば南極や南米の私も呼応し、事態は大事になってしまうからな。武力介入は避け、別方面からの支援アプローチを考えた訳だ」 「なるほど、流石は閣下。感服致しました……個人的かつ大々的に犬と存分に触れ合い愛でる場を守りたい保守的行動でなかった事を心から安堵します」 その言葉に、ああうんと短く唸り視線を逸らす総統 「ともあれ個人開業という形で診療所を用意してある。当面はそこを拠点としてくれたまえ。必要なものがあれば随時調達しよう」 「御心遣い痛み入ります、閣下。それではこれより任務に移ります」 踵を返し店から出ていこうとしたドクターだったが 「そういえば、こちらの雇った運転手が地元のパトカーとカーチェイスの末にパンツァーファウストをぶち込まれまして。幸い運転手がアレだったので割と無事でしたが。日本の警察は何時からあのような重武装に」 「ああ、何やら何かと物騒な昨今、警察も武装強化が必要だとある警官から個人的に相談を受けてな。町の治安と正義のためにといくらか武器を譲ったのだが」 「なるほど、留意しておきます。失礼致しました」 そう言ってドクターは今度こそ店を後にするのだった 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/kariage2dng/pages/74.html
チェシャ黒猫 ■性別 不定 ■学年 学年外 ■所持武器 爪 ■ステータス 攻撃:【黒猫】 防御:0 体力:不定 精神力:不定 FS(存在):不定 攻撃:【黒猫】 ①必中 ②対象に壁進入付与(一瞬) ③対象(敵味方)と共に強制自由移動1マス チェシャ猫 発動率:100% 成功率:100% スタイル:パッシブ タイプ:特殊型 効果①:毎ターン、自陣営フェイズ開始時、周囲3マス以内にランダムワープ 効果②:壁の中にいても死なない(壁の中⇔外への移動はできない) 範囲+対象:自分自身 時間:一瞬(単発) 制約:なし 能力原理 黒猫がにやにや笑って姿を消す。 「ばいにゃらあ~」 【黒猫】:死体を埋めたり、狂気に走らせたりする。 キャラクタ説明 シュレディンガーの猫という物凄い中二痕から生まれた不気味で片目の笑う黒猫。 歌うこともある。うまい。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3034.html
ドクター86 流された水着は取り戻したのだが、メイの泳ぎは覚えたばかりの犬かきである 下流に向かううちは良かったのだが、水着を掴んだ状態では上手く泳げず、上流へ戻るには勢いが全く足りなかった やや騒動の中心から離れた場所でよじよじとプールサイドに這い上がり、プールサイドでは走らないという注意を律儀に守り水着を握り締めてぺたぺたと歩いていった そんな姿を狙撃銃のスコープ越しに遠方のマンションの屋上から眺める黒服女、アンネローゼ 「うーん、やっぱこの町の都市伝説密度は異常だわ。さっきの男って朝比奈秀雄よね……アレと既に知り合いなのかな? ゆーくん達だけならバレても逃げ切れるけど、あれだけ色々いたら無理だわ」 諦めたように構えを解き、銃を分解してケースに収めていくアンネローゼ 「それにしてもプールかー。いいなー、こっちはこんな暑いのに仕事で、しかも上手くいってないのに」 水着を脱がせて騒ぎを起こし、結果として都市伝説集団の密度を高めてしまった変態達を焼き払ってしまいたい衝動に駆られるが、それも結局自分の存在を悟られる結果になるだけなので自重する 「ま、この調子じゃ狙える状況じゃないわね。アイスでも買ってこよ」 ――― 「平気、もう大丈夫だから、やめっ、やめー」 「んー、やっぱり若いと肌の張りが違うわね。今のエルフリーデもしっとりもちもちしてて良いのだけれど」 プールサイドで沙々耶が胸を隠すために羽織ったバスタオルの下に両手を潜り込ませ、バスタオル越しにも判るほどに思い切り揉みしだくトライレス つい先程まで溺れた沙々耶のための心配蘇生手順に基づいた意識確認が、いきなりこれである 「先生、いい加減にしましょう。公共の場でやり過ぎです」 「あらエルフリーデ、遅かったわね? そういうあなたも、公共の場でなければやるんでしょう?」 「TPOぐらいは弁えます。というか溺れた相手へそういう事をしてどうするんですか」 「ちょっと水を飲んだだけなのは確認してるし、気付けみたいなものよ。何でも四角四面に捉えてると場の雰囲気が暗くなるわ」 笑顔のままでも手は止めないトライレス その視線がつぅっとスライドしていった先にいたのは、ぞんざいに水着を身に纏ったパスカルの姿 武術の達人ですらその初動を見逃したであろうトライレスの動きを、ずいと間に割り込むようにして封じたのはヘンリーだった 「あら、やるわね?」 「乙女は守護するものだからな」 「俺は乙女じゃねぇっつーの。それより、今ここで何が起きてる?」 「さあ……水中に、水着を剥ぎ取って流してしまう都市伝説がいるのは気付いてたけど」 「気付いてたなら注意しろよ!?」 ヘンリーの後ろからパスカルが思い切り怒鳴りつけるが、トライレスは悪びれた様子も無く微笑を浮かべる 「危険は無いと判断した以上、水着を剥いで回ってくれる都市伝説なんて素敵なものを退治したら勿体無いでしょう?」 「被害出てんだろうが!? 溺れたんだろ、この子が!」 パスカルに指をさされて、胸を揉まれ続けているせいか指摘のせいか、顔を真っ赤にして俯く沙々耶 「水着は流されたけど普通に泳げないだけよ、この子」 「水着が流されなきゃ派手に溺れたりはしなかったんじゃないのか?」 「かといって、警戒心丸出しで片付くまでは遊べない、なんてのも可哀想じゃない」 水中では既に一部の契約者や都市伝説と、黒幕らしい水霊の戦闘が始まっている 「戦うにしても相性が悪いわ。私が戦ったら水の中にいる子達がみぃんな死んじゃうし。かといって……液体状の軟体相手に対抗できる子、いるかしら?」 このメンバーの中でまともに戦えるのは有羽だけで、その能力は殴打が普通に通用する相手でなければ発揮できない 「あの戦闘バカ、肝心な時にいねぇんだから……」 非実体の神すら叩き斬る武人は、とっくの昔にこの場を離れている 頭を抱えるパスカルを尻目に、トライレスは視線をプールの外へと向ける 一見すれば空を見ているようにも見えるその視線の先は、遠くに見えるマンションの屋上 「色々戦闘がこなせる子、うちにも欲しいわねぇ」 やがて、デリアと沙々耶の水着を取り戻して戻ってきたメイだが 溺れた沙々耶が脱がした末に流されてしまったコンスタンツェの水着は未だ回収されておらず、プールのどこかを漂っているのであった 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ